2013年7月6日土曜日

養殖人材 -コンサル出身者が事業会社で働くということ-

野菜や果物は旬がおいしいし、魚は天然ものがおいしい。でも、ハウス栽培や養殖は年中好きなものが食べられるし、質は一定だし、そこに価値がある。季節はずれなミカンを食べながら、人材にももしかしたらそういうことが言えることもあるのかもとツラツラと考えていました。

■養殖人材の価値
何かというと、最近採用面接をしていたり前職での経験からあくまで個人的に思うことなのですが、事業会社から見てコンサル出身の人材に養殖的なものを感じるのです。コンサル(出身)人材は、養殖とかハウス栽培と似ていて、一定のスキルセットを均質に安定供給してくれて、それでいて少し高い(給与水準が)。言語も一緒なので同僚になったDay1から話が早いですし、仕事をする上での呼吸もなんとなく合います。
(これは、私がコンサル出身という前提に立った話ではありますので一般化はできないかもしれませんが、コンサル出身者を多く採用する楽天やユニクロといった会社では部署の周りほとんどがコンサル出身者で大変仕事はやりやすい、でもこれコンサルプロジェクトと何が違うのという状況が多くあると聞きます)

ただ一方で、養殖ものやハウス栽培のメタファーで言うと、飛び抜けてフレッシュだったり、何これめちゃくちゃうまい!となったり、滋味あふれる感じもない。事業会社で必要とされるエッジの立ち方というのはコンサルタントとしてのそれとは異なるというのが私見です。
(念のため断わっておきますが、だからと言ってダメということではなく、(一部)事業会社のコンサル人材ニーズは確実にありますし増えているのではないでしょうか)

■養殖のコモディティ化
確かにコンサルタントとして、あるいは頭の切れという意味でめちゃくちゃ尖っていて、キレキレな人がいることは確かです。ただ、そのいわゆるコンサルタントのスキルセットというものも徐々に(部分的に)一般化してきているところがあって、スキルセットのコモディティ化が少しずつジワジワと進んでいるように思います。

ハウス栽培や養殖で考えると、最初は市場ニーズのあるものを旬以外にあるいは安定的に供給しますし、供給体制も限定的なので価値は非常に高いのですが、その技術や方法さえ確立されれば、安定供給そのこと自体の相対的価値は低下し、技術や条件さえ揃えば誰が作っても基本同じになり、程度の差はあれその収穫物はコモディティ化していくと思うのです。

上で、ハウス栽培や養殖は少し高いと言いましたが、昨今は必ずしもそうではないものも多いように思います。同じように、コンサル人材に対する事業会社の目も、どうしてそこまで社内の人間と比較して相対的に飛びぬけて高いスキルセットでもないのに、そんなに高いサラリーを払う必要があるのか、という議論が今後起ってこないとも言えないのかなと。私の知る限りまだそのような話は聞きませんし、コンサル出身者に対する一部事業会社のニーズは未だに活況ではありますが。

■いけすの外に出る耐性
養殖ものやハウス栽培は、その生育環境は非常に整えられていて、外的な要因や変化になるべくさらされないように育てられているところがあります。逆に言うと、外的な要因や変化に弱い。詳しく知らないので間違っているかもしれませんが、いけすの外に養殖マグロが放り出されたり、ハウスのイチゴをそのまま外に植えた場合、その環境に適応はできないのではないでしょうか。

また、養殖やハウス栽培は、基本的には一種(マグロならマグロ、イチゴならイチゴ)を一つの囲いの中で育てるものだと思います。純血培養と言いますか、多様性とは無縁の世界です。

上記をコンサル人材に当てはめるのは多少乱暴かもしれませんが、実態として、事業会社に来てみたはいいけれど、環境や仕事の進め方に馴染めなかったり、事業会社人として求められるパフォーマンスを発揮できなかったり、異なる価値観を受け止められなかったり、理由は様々あれど割とすぐにギブアップしてしまい、また別の会社に行ったり、コンサル会社に戻ったりという人はよくいます。
(もちろん当人には当人の主張する理由がありますし、一概に本人の耐性が低いということだけではないとは思います)

■多様性という組織の方向性
今後(というか今?)の組織におけるキーワードは「多様性」かと思います。最近DeNA南場さんの講演が話題になっていましたが(この全文書き起こし、かなり拡散していましたがお勧め)、「人は多様である方がいい。チームは多様なメンバーから組成されていた方がうんと強い」「本当に単一のまったく似たようなメンバーの組織はまとめやすいんだけれども、変化に弱いし、改革に弱い。」といったことを言われています。

当たり前なのですが、事業会社生え抜きで経験を積んでいることが偉いわけでも、コンサル出身である種特殊なスキルを身につけてきたことがすごいわけでもなく、それはただ異質なだけで、良し悪しではないということです。(ビジネス)人種が違うから無理と決めつけるでもなく、自分のキャラクターの角を丸くするでもなく、その多様な価値観や人を受け止め、その中で自身をポジショニングするということが求められているのだと思います。
(上述のように、スキルセットのコモディティ化は多少はあると思われるため、いずれその部分での異質感は多少薄れてくるかもしれませんが、コンサルで培えるものはそれだけではないと考えています)

逆説的ですが、多様性が求められている流れは、コンサル出身者には追い風だと思っています。ともに働く仲間の多様性を受け入れることさえできれば、それこそコンサルティングワークの中でまさに多様な組織や人を見ている訳ですし、自身も事業会社から見ればある種異質なマイノリティな訳ですし、その多様性の中でうまく自身をポジショニングし、その多様なチームをマネジすることに適性があるのではないかと、個人的にはプラスに思っています。

いけすの外に出ても変化に対応して進化できる養殖ものって結構強いのではないでしょうか。

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