2012年5月10日木曜日

デザイン・シンキングは実践あるのみ -d.schoolのバーチャル講座を体験してみた-


スタンフォード大学のプログラムにd.schoolというものがあります。ビジネスの世界でデザインの重要性に注目が集まっていますが、このd.schoolはデザインコンサルティングファームIDEOの創業者デヴィッド・ケリー氏が創設したプログラムで、デザイン・シンキングを学び実践する場として、スタンフォード大学の中でも非常に人気のプログラムの一つだそうです。欧米では最近ビジネスのスキルアップ・キャリアアップのステップとしてMBAではなくこういったデザイン系のプログラムに参加する人も多いそう。有名企業への就職例も増えてきているそうです。(結果、どういう成果をあげているのかは知らないのだけど)

ちなみに、幾つかエントリー(その①その②)している東大i.schoolはこのd.schoolをベンチマークの一つにしているのだと思います。

さて、ホームページを見ていると色々なプログラムを展開している様子で、デザイン・シンキングに興味を持つ者としては、どれも一度は受けてみたいものばかり。でも遠すぎ。。留学するにしてもお金かかりすぎ。。

そんな方々に朗報!d.schoolがWeb上でバーチャルにプログラムを体験できる新しい取り組みを試験的に展開しています。プログラムの動画が公開されており、世界のどこにいてもネットさえ繋がっていれば、d.schoolのエッセンスを体感することができるようになりました。講義型の授業のネット配信は進んできていますが、このような体験・参加型のプログラムまでネットで世界中の人に受けられるようにするというチャレンジは、さすがd.schoolといった感じです。

バーチャルプログラムはこちらより

動画は約90分で、d.schoolで行われた一つのプログラム(公開講座っぽい)の動画が収録されており、動画の中で講師が説明するインストラクションに従って、動画の中の参加者たちと一緒に実際のプログラムをやってみるというものです。ペアになって行う作業が中心になるので、2名以上で参加する必要があり、Webからダウンロードしたマテリアルを手元に置き、それを使いながらの作業となります。

テーマは“redesign the gift-giving experience”となっており、誰かにギフトを送る経験をリデザインするという内容です。

ものは試しとばかりに、この方面で話の合う知人とやってみました。一連のデザインシンキングのプロセス(Empathize⇒Define⇒Ideate⇒Prototype⇒Test)を体感できるようになっており、その中でとんでもないアウトプットが出るまでには至らないとは思いますが、限られた時間(動画は90分くらいが限界?)の中で、最大限デザイン・シンキングのエッセンスを学び、実際の仕事などで活用できるように設計されているように感じました。

振り返りのメモとして一連のステップを簡単に書き出しておきます。日本語部分は全て私の勝手な要約です。
※ここにインストラクションが、ここにワークシートがあります

Start by gaining empathy.>>共感から始める

1. Interview @8min (2 sessions x 4 minutes each)
パートナーのギフトを送る経験をリデザインすることがゴール。まずは、パートナーが最近いつ誰にどんな感じでギフトをあげたのか・・・といった、Yes/No質問ではなくオープンな質問を通じてパートナーの経験に共感することから始める。

2. Dig deeper @8min (2 sessions x 4 minutes each)
1で聞いたことの深堀り。ギフトを送る経験に背景にあるストーリーや感性、感情といったものを深堀りする。とにかく「Why」を深堀りまくることで、ギフトを送る経験の背後にあるパートナーの大事にしていることを探る。

Reframe the problem. >>問題をリフレームする(捉えなおす)

3. Capture findings @3min
needs: things they are trying to do*
*use verbs
ここからは、問題の咀嚼。1.2でインタビューした内容を捉えなおす。まずは「ニーズ」。パートナーがなぜ語られたようなギフト経験をしたのか、その背景にあるパートナーのニーズを書き出す。ポイントは、「Aさんがギフトを送ったのは、XXXXしようとして」といったように動詞で書いてみること。これにより具体的になる。

insights: new learnings about your partner’s feelings/
worldview to leverage in your design*
*make inferences from what you heard
1.2でインタビューで見えた「インサイト」を書き出す。ソリューションを後ほど創出する際にレバレッジできそうな発見を見出す。

4. Define problem statement @3min
______________(partner name/description) needs a way to ______________(user's need) Surprisingly//because//but ______________(insight)
上記の”__________”の部分を埋めてみることで、パートナーのギフト経験における問題(背景にあるニーズや特筆すべきこと)を構造化してみる。

Ideate: generate alternatives to test.>>アイデア出し:代替案をテストする

5. Sketch at least 5 radical ways to meet your user’s needs. @4min
ここからはアイデア出し。パートナーのニーズを満たすための新しくて過激なギフト経験のアイデアを最低5つ書き出してみる。ここはまだアイデア評価の段階ではないので、ラフでもなんでもいいので取りあえず数を出してみる。

6. Share your solutions & capture feedback. @8min (2 sessions x 4 minutes each)
5で考えたアイデアをパートナーに共有してみて、フィードバックをもらう。ここで気をつけるのは1にあった「共感」。フィードバックを通じてパートナーの持つ感情や動機を改めて探る。

Iterate based on feedback.>>フィードバックに基づき改善する

7. Reflect & generate a new solution. @3min
Sketch your big idea, note details if necessary!
これまでのステップで積み重ねたパートナーへの理解・共感と自身のアイデアを踏まえ、改めてギフト経験のソリューションを組み立て直す。

Build and test.>>プロトタイプを作り、テストする

8. Build your solution. @10min
Make something your partner can interact with!
ここからは紙の上ではなく、実際に色々なマテリアルを使ってプロトタイプを作ってみる。ギフトがモノであればそのモノを、目に見えない経験のようなものであればそれをイメージできるような造形を作ってみる。

9. Share your solution and get feedback. @8min (2 sessions x 4 minutes each)
What worked.../What could be improved.../Questions.../Ideas...
8で作ったプロトタイプをパートナーに共有し、フィードバックを得る。触ったり使ってみたりしてもらい、どうそれを使うのか(またどう間違って使うか)、どんな感想を持つのか、何かよくわかってないようならそれは何か、プロタイプに対するフィードバックを探る。


いかがでしょうか。体験してみたくなりましたでしょうか。

デザイン・シンキングのようなものは、書籍などを通じて学べることはあるものの、最後は実践して体験することでしか体得できないものであると思います。ただ、一方で方法論もまだそこまで一般化しておらず、仲間を募ってやってみようにも正直口でやり方を伝えるのは一苦労。そういう意味で、デザイン・シンキングの実践へのハードルを低くするこの取り組みは非常に意義のあることだと思います。

とは言いながら、こういったことをやろうと言って共感してもらえる人が周りにいるかは結構微妙かも。最初は、何かのワークショップやチームビルディングのような場で、アイスブレーク的な取り組みとして取り入れて見るのも一つの手ですかね。これを一つのきっかけにますます広がるといいですね、デザイン・シンキング。

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